©Akira Kinoshita

菅野 由弘(日本)
東京藝術大学院修了。「弦楽四重奏曲」がモナコ・プランス・ピエール作曲賞(1979)。「アウラ」でイタリア放送協会賞(2002)、日本文化藝術財団「創造する伝統賞」(2012)。作品は、国立劇場委嘱の「西行—光の道」、NHK交響楽団委嘱の「崩壊の神話」、ピアノのための「光の粒子」「水の粒子」「虹の粒子」(CD=BIS社)、古代祝祭劇「太陽の記憶—卑弥呼」。空間電子音楽「星雲光響2020-21」、NHK大河ドラマ「炎立つ」。現在日本作曲家協議会会長、早稲田大学名誉教授

ピアノ協奏曲第一番「海嶺」

深海深く拡がる海溝、静かな深淵から見上げると、海嶺が連なっている。海水に満たされた海嶺は、巨大な圧力の中に林立している。その姿を思い浮かべ、悠然と流れる水、駆け上る水を想像しながら、作曲を進めた。また、そこに生息する巨大な深海生物が行き交い、発光生物が光を放つ。深海生物の約8割が、光を放つと言われている。そして海中の埋み火。真っ暗な深海に光を感じ、光の渦を音楽に写し取ってみたいと思った。